人は宝、社員は家族との思いから職人の地位向上を目指す。

成功のツボ

挑戦:新卒、障害者雇用に取組み、「技術継承の仕組み」づくりを実践
成果:少数精鋭で従業員100%有資格を目指す

社員の半分が「技能士資格」取得者という、富士発条。障がい者や地元新卒の社員雇用、技能継承の仕組みづくり、プロ育成の環境整備まで、その根底には社員を大切にする、創業以来変わらぬ社風が息づいていた。

障がい者に配慮ができる環境をつくり、戦力へと育てる

 「人は宝」「社員は家族」−−。終身雇用が昭和の遺物に感じられる現在、そんな経営者の言葉は心に響く。60余年、線バネ加工一筋で培ったノウハウと技術力を強みに家電をはじめ生活関連、各種プラントなど広範な産業分野で同社の提案・技術開発力が評価されている富士発条。同社の社員を大切にする気風が感じられる言葉だ。

芯金(金属の丸棒)に巻きつけてばねを作る手加工ではばねは外す時、もとに戻る力が働くため、芯金の直径より大きくなる「スプリングバック」という現象がおこる。そのため素材や条件ごとに、瞬時にターン数をイメージし、最適な芯金を選ばねばならない。ピンを機械にセットし、指で抑えながら手作業で芯金に巻きつけていく。
その時間わずか数秒、間隔もすべて同じ幅!

 「創業者である父は、厳しくも優しい人でした。よく口にしていたのは、“人は宝”だということ」。そう語る代表取締役の山中善博氏も、父の意志を受け継いでいる。社員を「家族」と呼び、大事にすること、それは今も経営の基本になっている。
 山中氏は障がい者雇用にも積極的に取り組んでいる。「2年前に精神障がい者2名の職業体験を受け入れ、1名は2年後に正社員になってもらいました。もう1人は他社で正社員になったので補充も考えています」。この雇用は、中小企業家同友会大東支部で作業所を見学したのがきっかけだ。試しにばねをぐっと押さえる仕事をしてもらったら、社員より早く、このことで社員が工夫して生産数を上げる良い刺激になった。
 「だから無理して雇ったわけではない。社員が認めた人事で今もひたむきに作業してくれており、社員の意識も変えています」。障がい者であっても、まわりの社員が理解し、仕事をするうえでの配慮ができる環境をつくり、彼らが持っている素晴らしい能力を伸ばしていくことで、重要な戦力になると考えている。

熟練職人を中心とした、「技能継承の仕組み」づくりを実践

 ばねは線材の太さや素材の種類により低温焼なまし(熱処理)をすると、ばねの外径が大きくなったり小さくなったりし、隠れた要素が多くあり、サンプルだけで同じ精度の製品をつくることは簡単ではない。
 「ばねの熱処理は通常400~500度で25分と言われていますが、現場ではその通りには絶対しません。その時の気温や治具の形状など、その時々の状況判断が必要であり、実践でその微妙な加減を学んでいくしかありません。熱処理の温度や時間を変える、それが技術であり、経験値というものです」

過荷重をかけて、ばねをあらかじめへたらすことにより、使用時のへたりを緩和するセッチングという工程。セッチングと同時に品質検査もおこなう

 その高度な技術に、複雑なオーダーメイドの発注も多い。最新の機械と伝統的な道具を用いた手作業の融合でつくられる製品。それはまさに芸術品のような美しさを放つ。この匠の技量を若手につなぐ体制作りも強化してきた。
 勤続50年を超える熟練職人から20代まで、社員は19名。新卒の雇用も今年で5年目になる。最近では地元学生を社員として積極的に採用している。同社では常に少数精鋭精神を掲げ、一人三役以上の掛け持ち作業を実践する教育を展開。新人を見守るベテランと、上司の高い技術を誇らしく感じる若手、自然に芽生える師弟関係のなかで、技術は継承されていく。

二人に一人が資格取得者! プロ育成は、ばね業界の地位向上のため

 社員の半数以上が技能士(金属ばね製造)の資格を持つ。毎年試験に挑戦させ、将来的には、事務職の社員も含めて資格取得100%を目指している。

良いばねを作るには良い道具作りから!! 製造工程の中でも、完成度を左右するカギとなるのが「治具」の精度。線材の難加工を可能にするノウハウが詰まった治具があってこそ、多種多様なばねは生まれる

 「もとに戻るような動きをする器具の内部には、必ずといっていいほど、ばねが組み込まれています。広範囲な業種で使われるため、以前は不況に強い業界でしたが、今の環境は大変厳しく常に提案し続ける企業だけしか存続できなくなりました。にも関わらず、人目に触れることがほとんどない部品なので、一般的な評価は決して高いとはいえません」
 たとえば、余ったスペースにこれだけの強さのばねをつくってくれ、と製品企画の最後に話がくることが多い。しかし自分たちの技術を最大限に活かす、何百回使っても折れないばねを作るためにはできるだけ最初から企画に関わりたい。
 「だから、ばねの職人を“技術者”として見てもらえるように、ひいては、業界の地位を少しでも向上させるために、社員には国家資格である、技能士検定試験を受けるよう勧めているんです」

ブレイクタイム

Q

最近いちばん嬉しかったことを教えてください?

A

『大東市イルミネーション2015』で、サンタクロースの扮装をしたことですね。偶然、その後の作業のために長靴も履いていたので、「ぴったりですね」とまわりの人から褒められました。

Q

休日は何しているんですか?

A

地元のいろんな会に参加しているので、時間が少なくて。土・日も会社に来ていることが多いですね。日頃できないことを、週末にまとめてやっています。

企業概要

企業名
富士発条株式会社
コア技術
熱処理の温度管理
代表者
代表取締役 山中善博
住所
〒574-0044 大東市諸福3-10-1
電話番号
072-871-5161
企業紹介
http://www.m-osaka.com/jp/takumi/7050/
企業HP
http://www.fuji-spring.co.jp/
資本金
2500万円
従業員数
19名

認証:大阪ものづくり優良企業賞2015、ISO14001、ISO2004