MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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機械・工具の性能を最大限に引き出す金属加工油でものづくりに貢献

関西特殊工作油株式会社 代表取締役 龍 俊行 氏

関西特殊工作油株式会社
代表取締役 龍 俊行 氏

会社名関西特殊工作油株式会社
住所大阪府富田林市若松町東3-4-28
電話番号0721-24-2480
代表者名代表取締役 龍 俊行 氏
設立1966年
事業内容金属加工油・洗浄剤・工業用潤滑油

少ロットで、個々のニーズに応える自社製品の開発・製造を加速

自作の機械で油の潤滑性をチェックする龍社長。
潤滑性の高い切削油に変えるだけで、工具のもちは格段によくなる

少ロットで製造・販売できるのも、大手にはない強み

「金属加工油は、いわば縁の下の力持ち。ものづくりというとどうしても機械や工具に目がいきがちですが、それらの性能を最大限に発揮するには、機械や工具に合った潤滑油が必要不可欠なんです」。そう語るのは、50年以上にわたり、金属加工油の製造販売を行っている関西特殊工作油株式会社の二代目社長・龍俊行氏だ。
同社は、先代の龍昭男氏が1966年に創業。当初は、高品質な米国製金属加工油を広めることを主たる目的としていた。しかし、後継者として高校生のときから父の仕事を手伝ってきた俊行氏が、大学卒業後、金属加工油の輸入元でもある石油元売りで5年間の修行を経て戻ってきたのが1993年。日本はバブル崩壊による不況の真っ只中にあり、会社の売り上げは落ち込んでいた。
そこで着手したのが、プラザ合意をきっかけに新たなビジネスモデルをつくるべく先代が始めていた自社製品の開発・製造を、より一層加速することだった。「大手専業メーカーでは対応しきれない、少ロットで、ユーザーニーズに徹底的に特化した製品を提供することが、我々の生き残る道だと考えたんです」と龍社長は言う。
以来、同社では顧客一軒一軒の悩みを聞き、それを解決するための金属加工油をそのつど開発して提供することを実践してきた。特に機械や刃物とミスマッチな切削油を使っているケースは多く、そこを指摘し、それぞれの機械や工具に合った切削油に切り替えてもらえたら、精度や使用感は劇的に改善する。常にユーザーの声を聞きながらトライ&エラーを繰り返し、早ければ翌日に新しいサンプルを開発できるスピード、それを20ℓ単位の少ロットで製造することも強みとした。「売りっぱなしにせず最後まで面倒をみる」という先代の姿勢により、廃油の収集・保管ができる体制も整備。ロボットではなく人が作業する現場では、できるだけ手荒れしにくい切削油を開発するなど、デメリットを極力減らすことも心がけている。
「今や金属加工油はネットでも買える時代。だからこそ、お客様の顔を見て、個々のニーズに合うものを提案することが、我々が提供できる価値だと考えています」(龍社長)。こうしたきめ細かな対応が喜ばれ、現在、顧客数は約600軒。改良を重ねながら、40〜50年同社の製品を使い続けているユーザーもいるという。

ユーザーニーズにマッチする製品を、個別に開発・改良する 

植物油由来の切削油を全国に先駆け製品化

顧客と原料メーカーを巻き込み、1年半かけて改良&テストを繰り返した

自社製品の開発において最も革命だったのは、植物油由来の切削油を製品化したことだ。それも、きっかけはある顧客からの相談だった。「敷地に対して切削油の保有量が多すぎる」と消防署から指摘されたのだ。
油性の切削油など危険物の保有数量は、消防法で厳しく制限されている。そのため、加工現場では水溶性の切削油剤を使うことが多くなっているのだが、深穴加工のような精度が必要な難加工は、どうしても油性の切削油を使わないと満足な加工ができない。「なんとかならないか」という相談だった。
実は、龍社長は従来からライフワークとして深穴加工に注力していて、海外の文献をヒントに、約30年前から植物油由来の切削油の構想を温めていた。さらに2001年には消防法が改正され、250℃以上の引火点を持つ油剤は消防法の指定数量から除外されることとなった。とはいえ、高引火点を持つ石油系鉱物油は粘度が高く、金属加工油には不向きだ。そこで、消防法に引っかからない高引火点を持ち、なおかつ低粘度・高潤滑を実現すべく、満を持して植物油由来の切削油の開発に挑んだのである。
原料にしたのは、なたね油から合成したエステル。しかし植物油由来の合成油はコストが高く、酸化劣化が早い。サンプルを作っては顧客の工場で何度も何度も実機テストを繰り返し、原料メーカーも巻き込んで創意工夫を重ねた。そして約1年半後の2003年、ついに製品化に成功。
国内で先駆けとなった植物油由来の切削油は、それまで消防法によってやむを得ず水溶性の切削油を使っていた多くの加工現場から注目され、今では全国から問い合わせがくるほか、大手メーカーでも採用されている。

「この人の役に立ちたい」その想いが新たな製品と人の輪を生む

「油を変えてよかったと言われることがこの上ない喜び」と龍社長は笑顔で語る

会社を存続し、生き残っていくために必要なのは、製品づくりだけではない。「人の輪によるところが大きい」と龍社長は熱弁する。修行のために5年間在籍した会社で育んだ人脈は、今だに人が人を呼び、輪が広がっている。それだけでなく、自身の人間形成にも大きな影響を与えたという。
そんな龍社長のポリシーは、「裏切らない」「この人の役に立ちたいという想いで仕事をすること」。それが顧客一軒一軒の悩みや課題に親身に寄り添う姿勢となり、信頼獲得へとつながっているのだろう。
切削油を変えて精度がアップした、今までできなかった加工ができるようになった、工具のもちが格段によくなった、手荒れしなくなって離職率が減った————「こうしたユーザーからの喜びの声を聞くことが何よりも嬉しい。仕事冥利に尽きます」という言葉に、社長の人柄がにじみ出ている。
なお、同社が開発した植物油由来の切削油は、今後は環境の面でも脚光を浴びる製品になり得ると、龍社長は考えている。原油が有限であるのに対し、植物油は無限に確保しやすい資源であること、また、土に還る生分解性があり、燃やしたときのCO2排出量も少ないことなどから、環境負荷を減らす意味でもこれからますます広げていく必要性があるとの認識を深めている。
「顧客のために」から「地球のために」。業界に革命をもたらした植物油由来の切削油は、次の時代に向け第二章の幕が開けようとしている。

MOBIO担当者より

機械、工具、材質に合った切削油は良い商品に繋がる。それぞれが進化すれば切削油も進化しなければならない。『お客様にとって最適な、金属加工油作りの挑戦に終わりはない!』と、絶えず地球環境にも心を配った考えを熱く語っていただきました。(萩原)

2019年10月3日(木) ライター:成田知子