ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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「ガラスで社会を豊かにする」をポリシーに、独自製品と共に100年企業をめざす!
株式会社阪口文化堂 代表取締役社長 阪口 敏也 氏
会社名 | 株式会社阪口文化堂 |
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住所 | 大阪府門真市四宮5-9-32 |
電話番号 | 072-882-3561 |
代表者名 | 代表取締役社長 阪口 敏也 氏 |
設立 | 1951年 |
事業内容 | ヒーターガラス、複層ガラス、特殊加工ガラス |
−70度〜100度の極限温度状況でも曇らないヒーターガラスで、業界でも独自のポジションを築く。
昭和 22 年の創業以来、70 年以上にわたって、特殊加工ガラスの開発・販売を手がけてきた阪口文化堂。現在は、家電メーカーをはじめ、OA 機器メーカー、光学機器メーカー、自動車メーカー等、幅広い分野の企業にガラス製品を提供している。
同社は、長年の開発・納入実績を持つヒーターガラスやペアガラスを開発・製造しており、その技術は実にオリジナリティに富んでいる。中でも、ガラスにヒーター効果を持たせ、プラス温度、マイナス温度でも曇らず、中がくっきり見えるヒーターガラス製品は、業界でも有名。その製品群は幅広く、−70 度〜100 度に対応し、実験用の恒温恒湿器や冷蔵冷凍ショーケースで使用される「曇ランナ S」、−70 度〜40 度に対応し、冷蔵冷凍ショーケースやワインセラーに使用される「曇ランナR」、−40度〜40度に対応し、ETCゲート部品等、屋外にも対応した「曇ランナSL」をラインナップしている。「当社が長年培ってきたペアガラス加工のノウハウと、ガラスに電気を通す導電膜コーティング処理を行う技術、さらにガラスの間に職人が手作業で電極を取り付け、空気を密閉して漏らさず、侵入させないよう加工する技術は、他ではマネができないものと認知されています。実は、曇ランナ S は、意外なところでは、静岡県沼津市にある深海水族館で、冷凍保存された“生きた化石シーラカンス”の展示用にも使用されているんですよ」と4代目の阪口敏也社長は技術の特徴を語ってくれた。
こうした独自性と強みのあるガラス製品は、研究分野の機器類やコンビニの飲料・冷蔵冷凍食品ケース等にも使用が広がっており、今後新たなニーズの開拓が期待される。
世の効率化が進む中、あえて人と人が向き合って話しをすることを徹底し、顧客との信頼関係を構築
「父である 3 代目社長の体調不良をきっかけに、“そろそろ会社を引き継がなくてはいけないな”ということから、私は阪口文化堂に入社しました。以前は異業種で、ものづくりについては全くの知識 0 だったんですけどね」と阪口社長が語るように入社してからベテラン営業社員の下で、営業のイロハから学び始めたという。そうして1年もしない内に、先代社長が他界。いきなり 4 代目社長となり、会社全体を引き継ぐことになった。
阪口社長は、長年働いてくれている社員の声を大事にしながら、「ガラス製品で社会に貢献し続ける 100 年企業をめざす」という指針を打ち出した。またこれまでの会社運営において、良いところは残しつつ、変えるべきは変える!という意識を持って、社内変革にも取り組んだ。
「100年続く企業をめざして、まず私が取り組んだのは、若手人材の登用と教育でした。それまでは、年配の社員が多く、次代に事業を継承していくことが難しいという課題がありましたからね。それで人材を入れることと同時に、人を中心とした経営を重視し、私をはじめ、社員同士がコミュニケーションを取ることにも積極的に取り組みました」
こうした社内の変革と同時に、対外的には営業方法も見直しを図ったという。それまでは、お客様からの依頼が中心で、新規開拓や展示会への出展はしておらず、世の中の企業同様、電話・メールで注文を受けることも多くなっていたという。
“世の中の IT 化が進み、コミュニケーションが効率化される中だからこそ、今あえて人と人が会うことが大事”と考え、どんな些細なことでも営業がお客様を訪問して話しを聞くことを徹底。展示会への積極的な参加や MOBIO をはじめとした企業同士がつながることができる場にも社長や営業が出向いていった。
こうした地道な活動を続けることで、営業力が高まったことはもちろん、若手の育成にも効果があったことは大きな意味があったそうだ。
社員と心を一つにして、100年企業となるための色んなチャレンジを、これからも継続していく!
「人と人との対話を大切にした営業活動をする中で、最近は曇ランナシリーズの耐熱温度をもっと高めてくれという新しいニーズも出てきました。上限 100 度から、倍の 200 度に対応できるようにというオーダーで、今はヒーター部分の部材に使用する耐熱性の高い素材を探しているところです」との阪口社長の話のように、同社では今、新たな顧客ニーズに応えられる製品の改良に取り組んでいる。また、5 年後、10 年後を見据えて、ガラスと異素材を組み合わせた製品開発にも視野を広げている。具体的には、電光看板や展示用ショーケースなど、光とペアガラスを組み合わせた新しいガラス製品の開発にも積極的で、100 年企業の実現に向けた準備を着々と進めているところだ。
社内的には、社員同士の交流をより活発にする社内イベントや部門を越えて人が交流し、つながれる場を用意する等、社員一人ひとりの力を束ねてチーム力で戦える会社にする試みも、日々試行錯誤しながら、チャレンジしているという。
「100 年企業という大きな目標を実現する中で、私は、まず働いている社員全員、そしてその家族を幸せにする会社にしたい、そしてガラスをキーパーツとして、社会を豊かにする、社会に貢献する会社でありたいとの思いを持っています。もちろんこれは、私一人で実現できることではありませんので、社員みんなと対話をしながら、お互いの目指す目標、ベクトルを一つにして、実現していきたいと考えています」
100 年企業まではあと 30 年。現在 40 歳の阪口社長が見据えるのは、会社、社員、世の中に貢献する会社づくりという未来だ。
取材日:2018年11月2日(金) ライター:北川学(文士舎)
MOBIO担当者より
ピュアな視点と暖かい心を併せもつ、まさしくヒーターガラスのような阪口社長。
社内のチームワークはもとより協力会社様とのネットワークを大切にと「人」との触れ合いが大事であると語られました。
後ろを向かず現状維持でもダメ。常に先を見すえたチャレンジスピリットで100年企業を目指しておられました。(村井)